徐々にはじまっているWeb3.0の社会実装。それによって社会はどのように変化していくのでしょうか。マーケティングや広告をテーマにした世界最大規模のカンファレンス「Advertising Week Asia 2022」(AWAsia 2022)で行われた電通イノベーションイニシアティブ(DII)の小川浩史と鈴木淳一のセッションを通じて考えます。
小川 浩史
株式会社電通グループ 電通イノベーションイニシアティブ チーフ・ディレクター。入社以来10年以上、放送局担当や音楽アーティストをはじめとするコンテンツホルダーの担当として、メディアビジネス・コンテンツビジネスに従事。その後電通ベンチャーズ、DIIにて国内外ベンチャー投資・電通グループとのオープンイノベーション、電通グループの事業基盤開発に取り組む。
鈴木 淳一
株式会社電通グループ 電通イノベーションイニシアティブ プロデューサー。先端技術の利活用による競争優位戦略、メディアコンテンツ流通戦略などを担当するほか(一社)ブロックチェーン推進協会(BCCC)理事、MIT Technology Review IU35 Advisory Board、放送大学客員准教授等を兼務し若手研究者の発掘・支援に取り組む。プラットフォームフリーかつトラストレスのトークンエコノミーが導く未来について“Blockchain 3.0”(IHIET)にて概念化し、近著・監修『ブロックチェーン3.0』(NTS)にて具体化を試みる。
社会の要請と技術の進化によって起きるムーヴメント
小川:昨今、データの綱引きのようなものが企業と個人の間で行われています。日本でも個人の活動や実績のデータを個人に帰属させて利活用していくムードが強まっていますし、EUではGDPRによって個人データをより厳格に規制して管理する動きもあります。
そもそもWeb2.0の世界では、サービスを提供する企業や仲介業者に個人データが蓄積され、それが価値を生む構造になっています。一方でWeb3.0の世界では、個人データを他者に渡すことなく、プロトコルを通じてビジネスあるいは価値の取り引きが可能になります。
この個人データを守っていこうという動きは、社会的な要請もあると思うのですが、一方でパブリックブロックチェーンの進化によるところも大きいと考えます。社会の要請と技術の進化、この両面の実現によって起きている変化なのかなと思っています。
これは今後のパーソナルデータを含めた情報流通の仮説を表した図です。冒頭に申し上げたGDPRの話や、それが日本にどのような影響を与えるのかについて予測しています。「事業環境」と書いていますが、個人データの取り扱いは個人で判断すべきという社会的な要請によって、生活者の情報流通は管理者の存在する中央集権型のシステムから管理者を必要としない分散型のシステムに変化していくと想定されます。
こちらはWeb3.0時代における事業環境の変化のシナリオを表した図です。ここでいう事業は情報流通の仕組みそのもののことを意味しますので、ほぼすべてのビジネスを指します。これまでは企業が顧客管理システムによって個人をマネジメントする情報流通の世界があり、生活者は企業の規約に同意してサービスを利用する形態を取っていました。
しかし、これからは個人で情報をマネジメントし、必要に応じて企業に提供して対価を得る構造になっていくことが想定されます。個人がマーケットのなかで、より強い立場、より自由な立場、あるいはより独立した立場で活動していくわけです。そうなったときに企業は、生活者のインテンションに応えなければいけないと思っています。では、ここからWeb3.0の捉えておくべき特徴について鈴木さんから。
鈴木:Web3.0の特徴は、とにかくフラットだということです。たとえば今日、私は山手線の原宿駅で降りて、明治神宮前駅から千代田線で乃木坂駅まで来ました。「世の中には広告が多いな」なんて思いながら。そして会場にいちばん近いと聞いていた3番出口に向かったところ、なんとエスカレーターが止まっている。その瞬間に「ちゃんと広告してよ」と思ったわけです。
つまり何が言いたいのかというと、一方通行な情報よりもコンテキストに合わせてタイムリーに情報を発信してくれるほうが受け手にとっては有益だということです。事前に3番出口のエスカレーターが使用できないと知っていたら、別の出口を選択したかもしれませんよね。そういう情報に価値が生まれるのがWeb3.0の時代だと思います。
Web2.0は情報の出所に対する与信がつくりにくかった。だからこそ、プラットフォーマー自身が与信を持ち、媒体としての価値を正しく積み上げていこうとする動きがあったと思います。その結果として、星の数で情報を評価するようなことが可能になったわけです。一方で、その星の数は具体的にどんな人物がつけているのかまではわからないので、自分の価値観に合っているか不明なまま星の評価だけで物事を信じてしまうこともあります。
Web3.0では「DApps」という言葉がよく出てくるので、アプリでどう稼ぐかという話になりがちですが、その本質は「Fat Protocol」にあり、今後はプロトコルだけで稼ぐ、もしくはプロトコルと組み合わせたアプリで稼ぐように変わっていくと思います。
Web2.0では、GAFAMを中心とした巨大なプラットフォーマーが、アプリケーションをサービスとして提供し、その下にHTTPやFTPといったプロトコルレイヤがありました。
一方でWeb3.0では、プロトコル自体がビットコインやイーサリアムというお金なので、プレイヤーはWeb3.0の事業を新たにはじめようとしたとき、与信の問題をクリアする必要がありません。ですから、アプリケーションよりもプロトコルにフォーカスしたビジネススキームが求められるようになると思います。
では、ブロックチェーンによってどんな世界がやって来るかという話になると、Metamaskを中心とした「ウォレットでいかに投機的に儲けを出すか」とか「いかに筋の良いNFTを見つけて自分の与信を高めるか」となりがちですが、それはWeb3.0ジャーニーにおける最初の一歩でしかありません。
たとえば電通グループでは、なんらかの形で小中学生や高校生の受験やキャリア選択を支援できないかと考え、2016年から落合陽一先生と一緒に実証実験を兼ねたサマースクールを開催しています。2019年からは、NFTで卒業証明書がもらえます。そうすることで、内申書には書かれない課外活動を証明する履歴が残る。その情報を開示することによって、もしかしたら大学から受験のオファーが届くかもしれない。そういうおもしろい世界が実現できれば良いなと。
この卒業証明書は、FeliCaで培った知見をもとにソニーが開発したハードウェア・ウォレット技術を採用していて、ICカードをスマホにかざすことで電子署名を行える仕組みになっている。つまり、卒業証明NFTの発行時には落合先生のICカードを生徒のスマホにかざしてもらうだけ。それだけでオリジネーターとして「落合陽一」かつ最初の保有者として「生徒のウォレット」という組み合わせが刻まれます。将来、これを持っている卒業生が難関校の入試を突破したり、著名な研究者などになると、同じようなことを追体験したい後輩たちが自分たちのNFTにも価値があることがわかり、サマースクール自体のNFT価値も上がっていく。それによって、卒業生による同窓会DAOが形成され求心力を高めていくのではないかと考えています。
NFTの持ち主と発行主の間だけで閉じた経済圏をつくるのであれば、Web2.0でもいいんです。Web3.0がおもしろいのは、事業者Aから発行されたトークンがパブリックチェーン上に蓄積されていくことで、事業者B、事業者Cからもオファーが舞い込んでくることにあります。たとえば、このサマースクールはSDGsがテーマなので、日頃から環境貢献している人は環境貢献したいと考える事業者から別途オファーが届く可能性もあります。
Web3.0はプロトコル層における変化ですが、これまでにもさまざまな国際標準規格が生まれています。しかも、ブロックチェーン上でノード単位で実現できるのがおもしろい。このノードとは、中央がない末端という意味の言葉です。体でたとえると、心臓があって、脳があって、それを血管がつないでいますよね。その際、脳が臓器に指令を出すと考えるのがWeb2.0の世界。
これがWeb3.0では、血管自体が指令を出せるんです。たとえば、この血流量だと弱いからもう少し血液をつくってよ、と血管が心臓に直接伝えることができる。そういった自動化処理も、スマートコントラクトが実装できるブロックチェーンであれば可能になるわけです。
Web3.0によって生まれる新たな価値基準
小川:そういった背景を踏まえて、Web3.0が社会をどのように変えていくのかを二人でディスカッションしたいと思います。
私は「Web3.0にどのようなインパクトがあるのか」「どのような実装の過程を経るのか」「個人の生き方にどのようなインパクトがあるのか」という3つのレイヤから考えました。
まず「Web3.0にどのようなインパクトがあるのか」ですが、一つは個人による情報のハンドリングの習慣が生まれることだと思っています。たとえばMetamaskが広まってきたことで、自分でウォレットをつくり、そこに売買するNFTを入れて保管する習慣が身についてきています。そうした自己主権による情報管理の習慣が生まれてきたのは、2021〜2022年初頭にかけてNFTバブルが起きたポジティブな影響だと思います。
そして、現在は売買に利用する予定のNFTがMetamaskに入っていることが多いのですが、これからは先ほど話にあったサマースクールのような個人の学習履歴や価値観、あるいは権利を表現するトークンがこれから次々と出てくるようになるはず。
それによって、個人の主権のもとに個人の総体に迫るデータがハンドリングできると思っています。では、どのようなデータがハンドリングできるかというと、僕は2種類あると考えています。
1つ目は、ウォレットに蓄積するトークンデータは、いつからどんなトークンを保有しているかがわかり、当人がどんな価値観を重視しているのかを読み解けることです。
2つ目は、ここでは個人間の関係性の影響度グラフと書きましたが、PtoPでどういうトークンのトランザクションを行ってきたかがウォレットを見ることで理解できるだろうと。
となると、これまでできなかったインデックス化した情報がウォレットに入っていると同時に、その個人がコミュニティ内で「どういう役割を持った人間」で「どういう社会で生きているか」も見ることができるんじゃないかなと考えています。これが、個人による情報のハンドリングがはじまりつつある、2022年初夏なのかなと。
鈴木:ウォレットを持つということは、Web3.0の世界にIDを持つことなので、それ自体は必要な行為なのですが、話がそこで終わってしまって、あとは儲けを出すためにトークン価値の資産評価に専心するだけというのが今の問題ですよね。
トークンの値動きについて話すときに「ビットコインが今いくら」「イーサリアムが今いくら」と言われるので同じものだと捉えられがちなのですが、イーサリアムは同じパブリックチェーンに分類されているビットコインとは異なるものです。スマートコントラクトという、先ほど説明した血管に命を与えて自動制御させる機能が実装できるパブリックチェーンは、イーサリアム以降の時代にしかなくて、ビットコインではできません。
だから、イーサリアムはそれだけ未来が明るいというか、イーサリアムとビットコインを同じように扱っているのは2022年の今の段階だけであって、価値が理解されることで認知も変わっていくのかなと思います。
小川:そうなると、さっき僕が言った一つ目、二つ目の例のようにNFTがウォレットに並んで、それが見えるようになる世界が来るんじゃないかなと考えています。
行動履歴をはじめとした自分の総体が詰まったウォレットができれば、それはもはや本人の生き方であり、価値観であり、主義そのものになりますよね。では、そのウォレットをコネクトして使いたいサービスがどういうものかを考えたところ、マズローの欲求5段階説でいうところの自己実現であったり、尊厳欲求に近い領域になるのかなと。
ここでは「個人から見たときのブランド・他者との関係性」と書いていますが、サービスを受ける受けないという単純な話ではなく、自分の総体が詰まったウォレットをコネクトして使うサービスなので、企業あるいはサービスと自分がどのように接するかが非常に重要になります。ここでは「内的欲求=自らの価値観を表現するNFTの保有と開示」と書いてありますが、ウォレットコネクトして自らの生き方、尊厳、自己実現に直結したDAOへの貢献などが重要視されると考えています。
鈴木:ここに「価値観」と書いてあるのがすごく重要な視点だと思います。ウォレットは、価値観そのものだと思います。資本合理性や経済合理性だけで人の評価や価値観の評価が成り立っている世界は、一軸評価尺度といって財布の厚みだけが大事な世界です。
それがNFTポートフォリオそれ自体が直接総体として評価されていくと、私にとってまったく価値がないことを、他の人は評価しているという事態が起こるのだろうなと。
小川:今のウォレットは「何イーサリアム入ってます」「何ビットコイン入っています」と一軸尺度ですが、多様な価値観を表現できる時代になると、鈴木さんがおっしゃるような時代になるんだろうと思います。
鈴木:そうですね。とにかく楽をして生きていきたい、働きたくない、寝ていたいという人は、経済合理性だけの尺度でいうと生産活動をまったく行っていないので、これまでの評価軸で考えると価値がないわけですよね。でも「その生き方、憧れます」とブッダのように崇め奉る人が現れたら、その人の生き方自体が価値として評価されるようになります。こうしたことはトークンを見る人の見方によって変わってくるので、お金に換算すると価値がわからなくなってしまう個別のニッチなコミュニティが複数立ち上がってくるのかなと思います。
小川:なので、ここでは内的欲求=Web3.0、外的欲求=Web2.0とすごく簡単に整理してみました。「解決すべき課題によるWeb2.0とWeb3.0の併存」と書いていますが、Web2.0サイト的な課題とWeb3.0サイト的な課題があり、「or」ではなく「and」の関係がしばらく続くのかなと思います。
どういうことかというと、株式会社あるいは株主資本主義を典型とするWeb2.0がすごく得意な領域があるということです。資本があって、生産があって、デルタ資本という拡大再生産プロセスがあって、金銭というフェアな価値で最大限効率的に稼働させる。そういう資本主義的なシステムがミートする課題もあると思うので、社会変革の道筋としてWeb3.0と併存し、人間が叶えるべき欲求に応じてサービスの形態を変えるようになるんじゃないかなと考えています。
Web2.0とWeb3.0は共存していく
小川:では次に、「個人の学び方や生き方にWeb3.0がどのように影響するのか」という議題ですが、「影響しまくります」という話でしかないと思います。先ほどから出ているように、ウォレットには自分の価値観が詰まっているので。
ブロックチェーンやWeb3.0が出る前から個人のエンパワーメントに関する議論はありました。スライドの左側に「PATREON」というアメリカのサービスのキャプチャ画像を貼っていますが、これまでもプラットフォーマーに依存せず、ユーザーとクリエイターが接点を持ってマネタイズするサービスはありました。それをWeb3.0やパブリックチェーンは強調していくと考えています。なぜかというと、Web3.0はコミュニティーファーストですし、PtoPのトランザクションがすべてウォレットに貯まっていくからです。
しかも、中央不在・スマートコントラクトで権利の自動執行がなされるのがWeb3.0の特徴です。クリエイターエコノミーの権利や金銭的な配分に関しても完全にスマートコントラクト上でなされるようになれば、より便利に個人がクリエイターとして生きていけるし、PtoPの関係性の把握もより滑らかになるんじゃないかと考えています。
鈴木:先ほどのサマースクールの話でいうと、何の免許も持っていない人でもクリエイターとして認められることが起こり得るのかなと。そのときは、小学生に無人島に落ちているゴミを使ってアート作品をつくってもらったのですが、ゴミつまり無価値とされていたものがアップサイクルでちゃんと価値を持つとしたらおもしろいですよね。
また別の話として、夜になって近所のおじさんが綺麗な小川に連れて行ってくれて、蛍を見たんですよ。それに感動した子がいたのですが、その小学生が大人になって自然保護官や国連職員になり、蛍の正しい守り方に関する講演活動などをするとしますよね。そうすると、その小学生のキャリア形成に影響を与えた近所のおじさんは、中央集権的な話だと「教職員免許を持ってないよね」となりますが、トークンを発行して自分の教え子であることを証明できれば、教師としてのあるべき資質を持っているのだと評価されておじさんの発行するトークンの価値が教え子の与信向上にともなって上がるかもしれない。そういう主客の逆転、もしくはフラット化が起きるんだろうなと思います。
小川:どうしてもWeb2.0的にクリエイターエコノミーを語ると、単線的尺度のなかで「何人フォローしています」といった数の多い少ないが価値基準になるのですが、鈴木さんの話のように多様な価値観に応えられる個人のエンパワーメントがあり得るのがWeb3.0の世界の特徴ですよね。
鈴木:そうですね。だから、ヒエラルキーで稼ぎたい人はWeb2.0でいいんです。そうした前提があるうえで、自分の価値について箔付けや資格では評価してほしくない、でもそこを本質として捉えてくれる人を探している方々にとって、Web3.0はありがたい世界だと思います。
Web3.0時代に明らかになる人間の総体
小川:次は「NEO TOKYO PUNKS」というすごく成功したNFTプロジェクトの事例です。2021〜2022年にかけてNFT×DAOのブームがあり、このプロジェクトが個人のエンパワーメントをさらに強めたと僕は理解しています。
この「NEO TOKYO PUNKS」は、ローンチする前からTwitterやDiscordで協力者を募り、テーマソングも併せてローンチされました。これはNFTプロジェクトにおけるDAOの役割分担のなかで個人の活動がさらに強調された事例の一つですが、こうした動きがもっと一般化されると、その人がどんなコミュニティでどんな貢献をしたのかが取引履歴・視聴履歴・クッキー履歴などで明らかになり、やがて人間の総体が理解される時代が来るんじゃないかと考えています。
鈴木:Web3.0は真ん中の存在が極めて希薄なので、価値観を共有するコミュニティ内で「僕が宣伝しておいたよ」とか「僕をきっかけに〇〇さんに買ってもらえたよ」とかいった貢献が褒め称えられる現象がすでに起きているんですね。つまり、会社の看板や自分自身のキャリアを誇る必要がない。それはとてもおもしろいことだなと。
小川:現在はDiscordやTwitterで「ありがとう」と言っているだけですが、イーサリアムやガスの値段が下がると個人でトークンを出せるようになります。そうすると小さな「ありがとう」の積み重ねが見える化されるので、ウォレットがさらに重要になりますよね。
鈴木:そうですね。しかもそれが街みたいなフィジカルな空間と連携していくと、たとえばインターチェンジの出口で車線を譲ってくれた人に対してトークンを発行して感謝を伝えるようなこともできると思います。
小川:そういう事例がどんどん生まれるようになったら、個人がトークンを出せることのよさが広まっていきますよね。
個人の欲求を解決していく術を見つけるのが知恵の絞りどころ
小川:最後に社会の在り方に関する私なりのまとめを。先ほどの議論の通り、資本主義が果たしている役割は継続するだろうと。一方で、それだけでは叶えられない個人の欲求や解決できない社会課題がありますよね。資本主義がすべて最高なわけではないので。
そこでWeb3.0の機構やシステムや物の考え方が重要になる可能性があります。Web3.0は個人のエンパワーメントであって、株式会社と資本主義の限界を超える社会的な枠組みを提供し得るもの、つまりDAOだと思います。Web2.0の仕組みと合わせることで、人間社会と個人の視点から富と多様な価値を生み出せるのではないかと。株主資本主義の限界を理解したうえで、Web3.0のどんな機構を使って個人の欲求や欲望を解決していくのか。そのアプローチを見つけるのが知恵の絞りどころだと思います。
鈴木:Web2.0の世界から完全に切り離されたWeb3.0はないので、引き続きWeb2.0でレガシーを築いていく事業者は、生業を保っていく工夫が必要だと思います。そのときにWeb3.0のプレイヤーが意識する必要があることについて私から。
Web3.0が解決しようとしている問題はどういうもので、Web2.0とどのような違いがあるのかというと、Web3.0は個人が主役です。私は「一億総”顧問”化」と表現していますが、マスアダプションされない得意分野がある人はNFTによって与信がどんどん貯まっていくだろうなと。
ただ現在は、そういう得意分野を持った人に仕事を依頼したいと思っても、限られた人じゃないとアクセスできないんですよね。ところが、NFTを活用すれば、ノードのつながりから仕事を依頼することができる。そうすると、自分の得意分野だけで生きられるように経済圏が回っていくことになるんです。
小川:そのとき個人と個人、企業と個人のマッチングをどう最適化するかが我々の課題になりますよね。
鈴木:そうですね。あと、ある個人の行為をトークンにすることで、他人が追体験できるようになります。たとえば、「すごく好きな人と別れて辛いから、ミッドタウンの夕日を見ながらある曲を聞いた」という経験をしたとします。
それをパッケージ化してトークンとして発行し、誰かが追体験したら、トークンを発行した本人だけでなく、JASRACには楽曲使用料が、もしかしたらミッドタウンを管理している三井不動産にも報酬が入るかもしれません。そういう一次商材としての体験価値が高まっていくと思います。
そのうえでメディアや広告の未来を考えると、個人の多様な価値観を受け入れるスキームを事業モデルとして組むことがこれから重要になると思います。ということで、そろそろ時間が……。
小川:そうですね。時間が足りなかったですが、私たちはこういうことを日々考え、活動していて、Web3.0の未来を掘るような仲間を常に探しています。
鈴木:我々は本当にオープンにやっていますので、実証実験レベルでも案件レベルでも構いません。ぜひお声がけください。そうすることで、未来がより早く近づいて来るかなと思います。
小川:早くWeb3.0を社会実装しましょう。
鈴木:頑張りましょう。
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