*本記事は連載記事「Web3.0 Journey!」の第14回目です
こんにちは!
今回は前回の記事、「落合陽一 サマースクール 2024 - 福岡・糸島編 -」の後編になります。
前編記事はこちらからご覧ください。
「落合陽一 サマースクール 2024 - 福岡・糸島編 -」前編
今年のサマースクールの学びのテーマが「3DGSとAIによる映像制作と地理空間NFT」。
制作した映像作品を3DGSやARの技術を使って地理空間に配置し、それを追体験したことについて書きたいと思います。
今回も新しい学びがあると思うので、読者のみなさんにわかりやすくお伝えできればと思っています。
*
まず3DGSの復習から始めたいと思います。
前回記事にも書きましたが、3DGSとは、3D Gaussian Splatting(3Dガウシアン・スプラッティング)の略で、3D空間内の各データ点を、小さなぼんやりとした雲のような形(ガウシアン)で描き、それらが重なり合うことで、より立体的で滑らかな画像を作り出します。
以下の画像は糸島市の製塩所を訪れた際、置いてあったオブジェをカメラでスキャンし、3DGSの技術を使って3Dにしたものです。
カメラを向けてオブジェの周りを一周しただけで、一瞬にしてとてもリアルな3D画像が出来上がりました。
対象はオブジェだけでなく、人物もスキャンすると3Dデータにすることができます。
このように、低スペックなスマートフォンでも3DGSの技術を実現可能にしたのは、「AutoBuild」と「Light Model」という2つの革新的な手法によるものです。
これらは今年の6月にアメリカ・シアトルで開催された学会、CVPR(Computer Vision and Pattern Recognition Conference)で発表されました。
そして、学会で発表されたばかりのこの技術を、わずか1ヶ月後の7月には教育プログラムに組み込み、実際に体験できる環境を提供してしまうのがこのサマースクール。
アカデミアや先端科学産業分野において、その時の最先端の情報を学ぶことができる唯一無二の場でもあるのです。
そしてこの技術の学習目的は、サマースクール期間中に制作した映像作品を地理空間に配置することにあります。
地理空間に配置する?
映像作品の地理空間配置
例えば、以下の画像は、今回のサマースクールで私が制作した映像作品が入ったInfinite ObjectsをScaniverseという3DGSアプリを使って3D画像にしたものです。
*実際の画像では360度回転します
この画像を、空間体験を作成・追体験できるARアプリケーション「Spatial Curator」を使って地理空間に配置します。
すると、アプリを通してこのように実空間に作品が現れます。
次に、作品を配置したい場所に合わせて、XYZ軸を動かしていきます。
こんな風に実際に自身も移動しながら配置場所を探します。
そして、配置する場所が見つかると、次のステップに入ります。
・作品のアイコン画像を決める
・タイトル、所有者名を記載する(所有者名はペンネームでも大丈夫です)
・音楽を連携させる
音楽は映像作品に合わせ、授業で学んだ生成AIを使って創作したものです。
それぞれを入力して「空間をアップロード」を押すと、少し小さくてわかりずらいですが、以下の写真の右下に球体となって作品が配置されたのがわかります。
同時に、写真を見るとわかるように、私が配置した作品以外に他の方の作品が配置されていることも確認できます。
そして、配置した作品をクリックすると、先ほど設定した作品に紐づいた音楽が再生されるのです。
ここからが本当に面白いところです。
例えば、自分以外の誰かが配置した作品をクリックすると、その作品の楽曲が流れてくるため、制作者だけが体験した経験を他の人も追体験できるのです。
再生されるために、スマートコントラクトに書き込まれたプログラムが自動的に発動するという仕組みは世界初。
今回は作品に対しての試みですが、例えば無形資産である個人の体験や経験を実空間に配置し、他者がそれを追体験することも可能になるのです。
これは連載の初期に書いた、「個人の経験が価値になる追体験可能なトークン」を実現する技術がついに出来上がったことを意味しています。
(興奮する!)
*「個人の経験が価値になる追体験可能なトークン」についての記事はこちらをご覧ください
さらに、誰かが個人の経験を再生し追体験すると、その報酬が自動的に制作者自身のウォレットに入る仕組みになっています。
Spatial Curatorは、コントラクトウォレットのunWallet(アンウォレット)と紐づいているため、Spatial Curator上でオブジェクトを作成すると、その作品は自動的にNFT化されます。
また、自身のアドレスと接続されているため、作品の所有者が誰なのかを証明することができるのです。
今回の試みでは、再生数がNFTとしてウォレットに入ることに加え、サマースクール期間中に生徒たちの様子を抽象画にしてくださったアーティスト、トノハルナさんの絵のステッカーが、後日それぞれの自宅に届く予定です。
以下の写真は私のウォレット内の画像ですが、同じアイコンのNFTが4つ確認できます。
これは、私の作品が4回再生されたことを意味しています。
今回は報酬がステッカーですが、将来的には報酬が暗号資産として自身のウォレットに入ることも考えられます。
このような仕組みが実現したことで、自分にとって価値ある体験が、自分以外の誰かにとっても価値あるものになる可能性の世界が現実味を帯びてきました。
何か箔を付けなきゃいけないとか
資格を取らないととかフォロワー数を増やさないととか
そういった外側の評価基準を求める世界ではなく
自分の経験が「価値」となる世界
会社の看板とか
自分自身のキャリアを誇る必要がない
そんな世界がこれからのWeb3.0にはあり
外側の評価基準の中で生きることへの息苦しさを感じていた人にとっては、
とても生きやすい世界がやってくるのだと思います。
これまでは物理的な行動でしか評価されなかったことも、空間体験を作成・追体験できるARアプリケーション「Spatial Curator」ができたことで、無形だった個人それぞれの経験がデジタル資産として形になり、それを活用できるところまできました。
具体的な例として、この技術が実現すれば、私がかねてから作りたいと思っていた、
「パリのNation (ナシオン)広場でBTSの『Euphoria』を聴きながら朝の光や夕日を眺めてぼーっとしてるだけで、今この瞬間にいれる、幸せを感じられるトークン」
を発行するという夢も現実味を帯びてきたということです。
私がこのトークンを発行できるようになるということは、読者の皆さんもそれぞれの体験や経験をトークン化することが可能になるということです。
そして、世界の誰かがその経験を追体験すると、感謝の気持ちが報酬として分配されるようになります。
私が初めてWeb3.0について知った時に感じた、明るい未来への期待が、今回の体験を通じて実際に動き始めていることを実感しました。
このように、私たちが学んだ3DGSとARの技術の核心は、物理データをデジタル化し、それをリアルタイムで視覚的に表現することにあります。
例えば、3DGSでは物体の各ポイントがガウシアン形状で表され、重なり合うことで滑らかな3D画像を生成します。
これは、物体をよりリアルに再現することを可能にし、教育やエンターテインメント、その他の幅広い分野で革新的な応用が期待されます。
さらに、「Spatial Curator」のようなARアプリケーションを利用することで、これらの3Dデータを実際の環境に配置し、インタラクティブな体験を提供することも可能になります。
これらの技術によって、デジタルと物理世界の境界が曖昧になり、私たちの生活がより豊かでインタラクティブなものへと変わっていくのだと思います。
*
このサマースクールでの体験を通じて、私たちは3DGSとAIの力を借りて映像作品を制作し、その作品を地理空間にどのように配置するかを学びました。
そして、これらの技術は、私たちの表現の幅を大きく広げ、新たなクリエイティブの可能性を開いてくれました。
今回のサマースクールで学んだことは、ただの技術や知識だけではありません。
AIや3DGSを活用するプロセスを通じて、私たちは自分自身の感性や創造性を再発見し、それを他者と共有する喜びを体験しました。
異なるバックグラウンドを持つ参加者たちと共に、共創することで、新たな視点や価値が生まれ、私たち一人ひとりの成長を促してくれたと感じています。
このサマースクールの価値は、ただ知識を得ることだけではなく、その知識を自分の表現や未来の可能性につなげていくことだと思います。
今後、このサマースクールで得た知識や経験を、それぞれが自分自身のフィールドでどう活かし、さらなる挑戦を続けていくかがとても楽しみです。
また、この学びが私たちの未来にどのような変化をもたらし、社会にどのように役立つか、その可能性にも期待を寄せています。
来年のサマースクールでは、さらに新しい発見や成長が待っていることを期待しながら、またこの場に戻ってこれるよう、私自身も成長していきたいと思っています。
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