*本記事は連載記事「Web3.0 Journey!」の第15回目です
こんにちは!
先日、DIIさんから「今度、神社でNFTを配布しようと思っているのですが、来られますか?」というお声がけを頂きました。
Web3の可能性を探る連載記事『Web3.0 Journey!』の一環として、これはぜひ体験したいと思い、ひとつ返事で伺ってきました。
訪れたのは、品川にある蛇窪神社です。
東京都品川区にある歴史ある神社で、主祭神は「宇賀魂神(うがのみたまのかみ)」です。この神社は、特に「白蛇の神様」として信仰され、厄除けや開運を祈願する参拝者が多く訪れます。白蛇が神の使いとされていることから、社内には白蛇に関連するシンボルが多く、神秘的な雰囲気を持っています。また、地域に根ざした行事も数多く行われ、地元の人々から親しまれている神社です。
神社でNFTを配布する意義とは?
神社でのNFT配布、聞き慣れない方も多いかもしれません。
私も初めての経験でした。
しかしこれこそWeb3の持つユニークな可能性を実感できる場なのかもしれません。
というのも、これまでは宗教や占いのような信仰があるものは、個々人の心の中にあるもので、わざわざ表に出すものではなかったと思うんです。
けれど、神社での参拝履歴をNFTで取得することで、個々のアイデンティティを守りながら、自分の意志でその参拝履歴をデジタルに刻むことができる。
「私はこの神社に参拝しました」という行為がカタチとなってデジタル上に残すことができるわけです。
このように、自分の信仰の証を自分の主権のもとで管理できるのは、Web3だからこそ可能なことだと思います。
アイデンティティとWeb3のつながり
宗教的な信仰というものは、非常にプライベートな情報です。
だからこそ、どの宗派に属しているかを公に話す機会は少なかったと思います。
しかし、もし対話相手が同じ宗派だと知ることができたとしたら、そこから新たなコミュニケーションやつながりが生まれた可能性があったかもしれません。
それは「同じ価値観を持っている」という共通点を意味し、お互いの理解を深めるきっかけになるからです。
Web3の技術を活用すると、自身のアイデンティティを大切にしつつも、必要に応じてその情報を他者と共有することが可能になります。
例えば、神社で取得したNFTは、自身の信仰の証としてデジタル上に刻むことで、同じ神社を大切にしている他の人々と自然に共通点が生まれます。
そして神社に訪れるのは日本人だけではありません。
観光で訪れる外国人参拝者も増えており、彼らもまた日本の文化や神社の伝統に触れる中で、自分なりの信仰や思いを持つことが増えています。
海外からの参拝者にとっても、日本の神社との関わりがデジタル上に記録され、他の同じNFTを持つ人々とつながることができれば、日本文化への共感や理解がさらに深まるきっかけにもなると思います。
日本の文化が国境を越え、グローバルに共有される新しい体験として、海外に住む参拝者にとっても日本との絆を感じさせるものになる。
そして、日本に再訪した際、またその神社を訪れることで、自分の信仰の「履歴」が更新されていくという、新たなつながりの形が生まれるのではないかと、そんなことを思っていました。
進化するウォレットとプライバシーの選択
そこで気になってくるのが、信仰というプライベートな情報を他者と共有する方法です。
これまでのウォレットは、取得したNFTが一律で表示される仕組みが一般的で、たとえプライベートな信仰や個人的な体験を示すNFTであっても、全ての人が同じように閲覧できる状態でした。
こうした状況では、信仰のように慎重に扱いたい情報についても見せる範囲を選べないため、ユーザーにとっては使いにくさを感じる場面もあったかもしれません。
私自身も過去に、欲しくないNFTがウォレットに入ってしまい、それをどう扱えばよいのか迷った経験があります。
ウォレットはその人の価値観を表現するものだと思っているので、このような、本人にとって望むものではないNFTが入ってしまうことに少しストレスを感じていました。
けれど今回のプロジェクトを通してDIIさんのお話を伺ってみると、その課題が解決されることがわかったのです。
その解決策が、DIIさんがUnWalletの開発をされたSIVIRAと進めているウォレットの「マイページ」機能です。
このマイページでは、ウォレットに保有するNFTごとに「見せる・見せない」を選択することが可能になり、自身の価値観に関わるNFTを必要に応じてコントロールできるようになるのです。
例えば、今回取得した参拝履歴のNFTのよう信仰を示すNFTや、落合陽一サマースクールで取得した卒業証明のNFTなどを、場や人に合わせて表示したり、共有したくないNFTは非表示にするといった使い方ができるわけです。
このような調整が可能になると、将来的にさまざまなコミュニティの中で自身のアイデンティティを調整しながら表現することが可能になると思うのです。
ウォレットが単なる保管場所から、自分の意志やアイデンティティを反映し、他者とのつながりを育むための「個人のデジタル空間」へと進化していく過程を今まさに見せてもらっている、そんな気分です。
プロジェクトの背景と主催者の想い
今回のプロジェクトにおいて、蛇窪神社の「五色人祭り」でNFTを配布するという新たな試みが実現した背景には、主催者の団体が持つ「新しい寄付の形を作る」という社会貢献のビジョンがありました。
彼らは、2019年に「お金ではない価値を育てる」ことを目指し、ボランティアで運営を開始しました。
神社でのお祭りを通じて得られる収益をすべて子供達の学びの場へと投資し、子どもたちが大人になる過程で「これを小さい時に知りたかった」と思うようなことを学ぶ機会を提供しています。
具体的には、蛇窪神社で寺子屋を運営、今後は大使館などでも同様の活動を広げていく計画があるそうです。
主催者の方にお話を伺ってみると、「Web3は、経験や体験そのものが価値になる」という考えに共感したそうです。
このような言葉が聞けて私は嬉しかったんですね。
なぜかというと、今まではこのようなWeb3の概念や本質について対話ができる場や機会がほとんどなかったので、「あぁ、この会話が一般的にできるようになったんだ」と。
そして、彼らの活動の姿を見ながら、DAO(分散型自律組織)のように、コミュニティの一人ひとりが少しずつ貢献し合いながら、全体の価値が高まっていくものだと感じました。
未来に向けた新しい価値の広がり
この五色人祭りでのNFT配布を通じて、Web3やDAOといったテクノロジーが、日本の伝統文化や個人の信仰とどう交わり、新しい価値を生むのかを体感することができました。
神社での参拝履歴がデジタル上に刻まれ、信仰が証として共有されることで、文化の壁を越えたつながりが生まれる可能性を感じています。
今回の体験を通して、Web3が今後どのように私たちの生活やコミュニティ、文化に深く関わり、より豊かな社会を作っていくのか、その過程を見るのがさらに楽しみになりました。
日本の伝統と最新テクノロジーの融合が、DAOのように一人ひとりの思いや信念を支え、より多くの人と価値を共有する場として発展していくことを期待しています。
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